33.最近の見物など 111106

10月15日(土)
銀座松屋日本デザインコミッティーにてナガオカケンメイ氏×面出薫氏のトーク。14-15時。ナガオカ氏がホストの連続モノの一回。面出氏は東京国際フォーラムなどの照明を手掛けた著名な照明デザイナー。普段あまり知ることのない分野なのでフラッと聞きに行ってみる。
世界でもっとも照明の美しい都市は?との質問には、フランス第2の都市リヨンとの返答されていました。長崎の原爆記念館の噴水?の中に設置した光ファイバーの照明は、滅多にない100点以上の仕事だったと。どんなものなのだろう。
(後日、著書「世界照明探偵団」(鹿島出版会)を購入。)
その後、有楽町hokuoh(北欧)でサンドイッチ食べて、上野へ。芸大陳列館の鞄のACEの展覧会。通路を歩くとスリットから各年代の製品がちらりと見える壁面の構成が面白い。展示室にいた方(ACEの社員の方)によると、本社内の博物館が収蔵しているもののほか、退職した社員の方の私物も展示に動員したとのこと。(正直に言えば、あまりデザインの変遷を理解できず、、、基本形状がどうしてもほぼ同じなので、どこが変化してきているのかは、説明してもらわないと分からなかったのかも。)

10月16日(日)
近所の公園で朝からフリマ。なんでも100円で売り払い、やっと引っ越し後のいらないものが片付く。「このドライヤーも100円?うちのドライヤーまだ壊れてないけど、それ捨ててコレに変えれば良いよね??」と聞いてきたおばちゃんが印象的。そんなこと聞かれても。女の人って、みんな何でもいいから買い物したいんだなぁと思った日曜日。午後は疲れて昼寝。

10月22日(土)
新宿の工学院大学、今和次郎の展示。荻原正三氏と黒石いずみ氏のトーク。会場となる大学の教室には50名ほどの観衆。K君も来ている。
荻原氏、黒石氏の丁寧なプレゼンから、久々に今和次郎に関する情報に触れたが、やはり、この人の不思議さが今ひとつ捉え切れない。
画家、工芸家、建築家ならば、残された絵や器や建物について、当時の言説やシーンから見た位置づけを検討し、それについて語り、評価をし、現代から見た位置づけを辿ればそれなりに人物を把握した気持ちになれるのだが、この人はそうではない。問題意識が何で、何をし、後世にどういう影響を与えた人物なのか、私はいまだに把握しきれない。
残したもの(業績)には、いくつかの建築(※)もあるらしいが、本業と言えるほどではなさそうだ。それよりむしろ、田舎では農村研究、民家研究、都会では考現学、服装研究、流行研究。これらを総括すると、彼は何をしていたのか。
大きく捉えると、人類学者の仕事に似ている。(実際、黒石氏のトークの中でも、考現学の手法と、今より先輩世代の人類学者坪井正五郎の手法との類似が指摘されていた。)
いわゆる人類学者と言えば、先進国から途上国へ赴き、その暮らしを観察・記録・分析・
記述することを生業とするが、今の場合は、それが大正期の農村と民家だったり、関東大震災後の上野公園だったり、1925年の銀座だったり、1930~31年のヨーロッパだったりしたのだろう。
 観察・記録・分析・記述とは、すなわち、見る人だったということであって、ここまで見ることだけに集中した人物というのが歴史上あまりいないので、これが今氏が何者かわかりづらいことの理由の一つかもしれない。「画家」「工芸家」「建築家」というカテゴリーに収まれば、人は「彼は~という人だ」とすんなり腑に落ちるのだが、「彼は生涯観察していた人だ、しかも絵も描かず、工芸品も作らず、建築も建てなかった」というと、いったいそれが何者か分からなくなってしまう。
さすがに「観察者」に終始することも不自然で、観察により得た知見を、彼はどうアウトプットしたのか?農村の生活改善?地域振興?そうなると、今で言えば地域振興のプロデューサーのような存在だったのか。確かに戦後は家政学や生活改善関する活動も多い。
戦前の活動と戦後の活動を分けて考えた方が良いのかもしれない。
でも、もしかすると、今氏は、「○○家」と通称ことを巧妙に避けて、彼の晩年まで辿りついたのかもしれない。「○○家」と呼ばれないままに教授になることは、「○○家」と呼ばれて大家になることよりも難易度の高いことではないか。
今秋から青森県立美術館で展覧会が開催され、来年2012年早々には東京汐留の松下電工ミュージアム、そして未定ながらその後大阪への巡回も検討されているとのこと。この展覧会を見れば、彼がいったい何者だったのか、もう少しは分かるようになるのか。
「民家研究の大家」というのが今和次郎の一つの肩書きではあるのだろうけれども、何かそれだけでは腑に落ちず、彼の興味関心や言動を見ると、いま一つぼんやり明るい輪郭の広がりがあるところが困るのだ。(単なる民家研究の大家は、家にツゲの木のテーブルを作ったり、カケた茶碗を克明なイラストで残したり、全国のもんぺ分布図を作ったりしない気がする。なんだろうこの感じ。実はアーティストだったのか。)
※今氏の建築は、非常に実用的で、奇を衒ったところは無く、一見すると建築家が建てたようには見えないが、よく見ると、暮らしやすいよう、使いやすいように工夫がしてあるという(黒石氏談)。

その後、K君と新宿で2軒。2軒目、行ってみたかったサントリーバー「イーグル」初訪。程よい穴倉感とレトロ装飾と店員のオールドスタイルな接客に好感。さらに我が家にてマッコリ。山口百恵DVD。調子に乗って3時まで飲んで、翌日疲労。

10月29日(土)
この日から早稲田松竹で惑星ソラリス…も見逃す。いつかスクリーンで寝たい。休日出勤。頑張って自転車で往復。六本木ミッドタウンでデザインタイド見ようかと思うが見ず帰宅。

10月30日(日)
東京大学(本郷)福武ホールにて、原発PR映画上映会。ヨメと。記録映画保存センター主催。映画に登場する原子物理学者の藤本陽一氏がゲストとして来場。ご高齢にもかかわらず、専門分野に関する発言はカクシャクとしており、科学者の発言の説得力にシビれる。「私個人の考えというわけでなく、当時物理学を少しでも知っている者なら、原子力は軍事・武器であって、安定的にエネルギー利用するという発想自体に否定的だった」との発言に驚いた。そんなものがなぜ50基も・・・。みんな疑問に思いながら、大きな推進力が働いていて気づいたらこんなに進んじゃった、というのが本当のところなのかもしれない。吉見俊哉先生のプレゼンテーション、戦後米国主導の「原子力博覧会」なるもの。「私は博覧会が専門ですから」とさすがの切り口。

11月3日(木・祝)
国立新美術館「モダン・アート、アメリカン 珠玉のフィリップスコレクション」
秋晴れの文化の日らしく。ヨメと。フィリップスはオランダのフィリップス社とは関係なく人名でした。普段はワシントンで公開されている実業家による個人コレクション。
オキーフ、ホッパーが良かったが、戦後美術に比べて目にする機会の少ない19世紀末から20世紀初頭のアメリカ絵画が面白かった。自然描写から都市描写へブームが移るのだが、アメリカとはもともと自然大国?だったのだと再認識。(図録2200円を買って安心したので、画家の名前や作品名はとんと忘れました。)
関係ないが、柏木博『デザインの教科書』(講談社現代新書、2011年、80-84頁)によると、オキーフのニューメキシコの自邸は一般人でも見ることができるらしい。写真集が欲しい。『オキーフの家』(メディアファクトリー、2003年)。
ギャラリー間(TOTO)にて震災前の東北被災各地の建築模型の展覧会。合掌。帰り際に(100円だけど)募金。

11月5日(土)
会期ギリギリにすべりこむ横浜トリエンナーレ2011。ほとんど調べずにとりあえず横浜美術館最寄りのみなとみらい駅へ。12時半着。チケット購入の列には長蛇の列。しかし、すぐ近くのローソンに行ったらロッピーですぐに買えて拍子抜け。連携チケット1800円。画鋲絵、ぶら下がる青いランプ、工業用パイプのオルガン、望遠鏡の作品などが印象に残る。
無料バスで日の出町、黄金町の連携会場へ移動。トリエンナーレとは関係なく、インドカレーと焼き鳥を食べる。焼き鳥は町の鳥肉屋の店頭で売っているのだが、プチバブルが起きていてちょこちょこ観客が買っていっている。それでも店主の親父は今までどおりの商売を崩していないようで、何の変哲も無い焼き鳥を紙コップに入れて供する。1本80円から。いくつかの会場を覗き、黄金橋の真ん中から遠景に異界のようにそびえるランドマークタワーを眺めて、コンビニでジャスミンティーを買い、またバスに。
日本郵船bankart会場までのバスで30分ほどすっかり居眠りして体力回復。16時を過ぎ日も傾きはじめ、駆け込みの観客も増えてきている。タイのアピチャッポンさんの作品、その奥の光をフィーチャーした?作品(H2ロケット打ち上げシーンが印象的)、the clock(クリスチャン・マークレー)などが印象に残る。
新港ピアの連携会場まで徒歩20分と聞いて萎えていると遠くでドンガドンガと花火の音。今年は夏に花火を見なかったので初の花火。スタッフの方に聞くと、トリエンナーレのイベントではなく、近くでやっている線香花火大会(みんなで線香花火をする大会)のトリなんだそう。しかし、みんなワーイワーイと岸壁から花火を見ているドンドガドン。
一瞬お茶(ワイン)を飲んで体力を回復し、新港ピアへ。誤って赤レンガ倉庫に着いたりしながら何とかテクテク到着。しかし、もう二人とも充電切れでチラ見して終了。外へ出ると観覧車の時計は18:37。スタッフの方々もだいぶ疲労しているようでした。お疲れ様でした。
みなとみらい駅の改札内に崎陽軒のシウマイが売っていたので(さすが横浜!)、見事観光客トラップにひっかかり15ケ550円をぶら下げて帰宅。ビールとシウマイでヨメとあーだこーだ言ってるうちにトロンと就寝。

11月6日(日)
■(チラチラと)読んだ
柏木博「デザインの教科書」(講談社現代新書)
鶴見俊輔「思い出袋」(岩波新書)→著者が頭良すぎて内容はよく分からないんだけれど、通勤電車で読むと、こういう時代だからか、何だか絶対の知性に対して安心(帰依)できるようなありがたい気持ちになる。
「乗物万歳」(阿川弘之・北杜夫の対談、1981年、中公文庫)→図書館の北杜夫追悼コーナーで。柳原良平さんの船、電車(昔の国鉄のボンネットの長い特急)、飛行機(たぶんトライスター)、車(ワーゲンビートル)の表紙イラストにつられて。良い時代。
■(日曜日が嬉しくて)買った
「イタリア古寺巡礼 フィレンツェ→アッシジ」(新潮社とんぼの本)
「日本のデザイン」原研哉(岩波新書)
スピノザ「エティカ」(中公クラシックス)→枕元に置くため・・・昔から欲しかった。
■(それでも留まって)買わなかった
國分功一郎「暇と退屈の倫理学」(朝日出版社)
(面白そうだが、重くてすぐに読めなそうなので備忘まで。)
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